瑞牆山頂

2008年 9月21日記

 以下は、瑞牆山山頂周辺のボルダーの案内である。

 仲間の一人がまだ植樹祭会場の遊歩道の出来る前に歩いた道らしく、最初は南沢といわれる沢沿いに登ってゆくはずだという記憶を頼りに適当に遊歩道を上がると、幹にテーピング用のテープが巻かれている木が現れる。多分道しるべだろうとその道の先に進むと、殆ど無駄な道を歩くことなく登山道に入ることが出来た。

 沢沿いのなだらかな樹林帯の中の道が暫く続く。

 道沿いにボルダ−が現れる。どうやら誰かが磨いた岩のようだ。帰りにでも触ろうかと、観察だけで先に進む。

 この登山道沿いには、ボルダリングの対象になるかどうかは別として、結構ボルダ−が散らばっている。傾斜もそんなには無いし、結構踏まれた道である。途中、道標も設置されている。どうやら登山道として整備された道のようだ。

 沢沿いから外れ、少し道が急になってちょっとした尾根を登って行く。そして、程なく結構急な斜面のトラバースが始まる。でも、道はしっかりしているから不安は無い。

 少し疲れ始め、相棒にも少し置いて行かれだした頃にカンマンボロンの岩の基部に到着する。

 今回のハイキングの目的の1つは岩へのアプローチの確認と岩の偵察ということだったらしいので、仲間はカンマンボロンの岩のほうに登って行く。登山道から少し外れて行くから、道は少し厳しくなる。相棒も何とか登って行く。

 岩の右のほうに仲間の知り合いが開いたというルートが有るらしい。仲間はそのルートの出だしを偵察している。

 下から人の声が聞こえてくる。続いて人が現れる。朝挨拶に行った人達だ。朝話していた「ショートサーキット」という課題を登りに来たらしい。その課題はこの岩に有るらしい。仲間は早速その課題を教えてもらう。

 岩の左の面の7〜8mのクラックである。見た目もあまりぱっとしない、そこがルートなのかと、教えられなければわからないくらいの地味なクラックである。現に先にその課題の下を歩いた筈なのだが、ピンがあるわけでもないから、小生にはルートだと認識できなかった、というか、クラックだとも気が付かなかったくらいのクラックである。しかし、そのクラックのサイズが悪いらしい。なんだか登りにくい課題らしい。一度触ってみると、なんだか気になってしまうルートらしい。仲間もなんだか興味を持ったようだし、一緒に登らないかと誘われたようだが、一応本峰へということで先を急ぐことにする。

 別れ際に、大ヤスリからが意外と遠いよと言われて出発する。

 そこからは大面岩、大ヤスリを経由して一般の登山道に合流するのだが、急に道が急になり、悪くなってくる。所々崩れた場所が出現し、ロープが張られた場所が何箇所か出現する。

 それ迄頑張ってきたらしい相棒のペースが急に落ちだす。相当に足に来ている様子である。下りを考えると少し不安になりだす。その反面、仲間のペースに付いて行くのがやっとだった小生にとっては、相棒のペースに合わせられることになったので、大分楽になってきた。正直、相棒が良くもまぁ小生にとってもきつい若人のペースに付いてくると感心するやら、相棒にも置いて行かれるという、小生にとっては相当なショックも感ずるやらしていたのだが、やはり相当のオーバーペースだったということがわかり、少し安心する。

 樹林帯の傾斜が緩くなったちょっとした広場状のところに出てくる。小さな岩の上には幾つかのケルンが積まれている。先行していた仲間がそこで我々を待ってくれていたので、そのまま、そこで少し休ませてもらう。

 少し急なルンゼ状を暫く登って行くと、尾根の先端の岩峰とのコルにでる。尾根の反対側は少し眺望が利く。木に巻かれたテープには1950mだかのコルと、1850mだかのコルとの、2通りの場所が書かれている。仲間が地図で確認するが、1950mだかでは無いような気がするけれども、判然とはしないという。高度計では1950mをさしていたらしいのだが。

 尾根の反対側の斜面を少し降り気味にトラバースし、急なガレたルンゼ状を登りだす。先ほどのコルでも少し休息したとはいえ、やはり相棒の足は遅い。でも、何とか頑張っている。

 ちょっとした尾根状を登りだす。上から夫婦連れが降りてくる。奥さんのほうはウエストポーチだけという軽装である。こんな人がこの道を降りても大丈夫かなと一瞬思ってしまう。

 挨拶をすると、その夫婦の人が、もう少しで大ヤスリだと教えてくれる。

 その夫婦の旦那さんのほうが、小生にクライマーかと聞いてくる。まぁ、ボルダラーだがクライマーのはしくれではある。一応と答えると、小生のザックに付けてあった歯ブラシとヘキセントリックのアクセサリーでわかったという。そして、昨日ハイピークとどことかを登ったという。なんだ、やっぱりクライマーだったんだ。でないと、この道は降りては来ないだろうと、納得する。そして、お節介にも、こんな道を降って大丈夫か一瞬心配してしまったことを告げる。

 大ヤスリに近づくと、ヘルメットを被ったお兄さんやザイルを首に掛けたおじさんに出会う。やっぱりこんなとこまで登ってきて、結構登っているんだと感心する。

 間もなく大勢の人達が降ってくる。そして、挨拶が忙しくなる。急に人が増えてきた。そうか、一般の登山道に出たんだ。それにしても、この人数の多さはどうだ。改めて驚く。

 梯子を上ったり、ちょっとした岩を攀じ登ったり、結構急な道を登って行く。やっぱり瑞牆山は岩峰だから、一般の登山道といっても岩がゴロゴロしており、傾斜も急だし段差も大きい。ハアハアいいながらやっと山頂に到着する。

 山頂は岩峰である。大きな岩が林立している感じである。そのうちの大きな岩の上に立っているという感じである。

 仲間がフラットソールを取り出し、近くの岩を登り始める。小生も岩と岩の間が少し窪んだ、落ちてもその窪みに落ちるだけの高度感の無い岩を登ってみることにする。

 最初に目を付けたところはのっぺりとしていると感じたのだが、仲間が登るのを見るとそんなに難しそうではない。よし、そこを登ろう。

 頂上の岩からもう1つの岩の頭に移り、その岩から、岩と岩の窪みにずり降りる。

 最初はブランクだと思っていた壁にガバホールドがあり、その上にもガバに近いホールドがあったので、簡単に登る頃が出来る。

 今度はどその岩の向かいの岩を登るべく、再び岩と岩の窪みに降りてゆく。

 その岩は、右のほうに隙間があり、そこのカンテが使えるので、先ずはそのカンテを使って登ってみる。

 傾斜は無いから離陸は出来るが、ホールドを右側のカンテだけに求めるから、バランスが悪い。両手レイバックチックなホールドから左手をリップに持ってゆくところがなんとなく悪い。飛ばせば良いのだろうが、万が一リップが持てなかったら、岩だらけの、それも、岩と岩との隙間が空いていて、その隙間には底が無さそうな、そんなところに飛び降りなければならないのだ。それはやりたくない。何とか足を決めて、左手でリップを取りに行く。リップは見た通りのガバで、多少じゃりつきはしたが、十分に持てたので、少しリップをトラバースして岩の上に出る。

 仲間の一人が我々のいる岩峰の下に降りて、その岩峰を登って来た。最後は斜めのクラックで這い上がってくるのだが、下が結構切れているし、そのクラックのジャムもあまりよくは無いらしい。

 小生も岩峰の下のほうに降りてみる。岩と岩の間は隙間が空いていて、その隙間には底が無い。落ちたらやばそうなところである。でも、ハイ松が生えていたりするから、そんなに高度感は無い。

 仲間の一人が、先に登って来た場所の左のほうの高度感の物凄くある、落ちてはならないカンテを登りだす。それに、携帯を持ってきているから、ヘリの出動要請が出来るから大丈夫だとか、色々と野次を飛ばす。

 相当にアドレナリンが出たらしいが、何とか上に抜ける。

 その岩には丁度岩の天辺から1mくらいのところに水平にクラックが走っており、右のほうからトラバースして行くことが出来そうに見える。そのクラックでもう一人の仲間がトラバースを始める。

 そのクラックは指は十分に入るらしいのだが、岩茸が生えているらしく、なんだか怖いらしい。でも、無事トラバースが出来たのでもう一人の仲間もそこをトラバースする。

 いつのまにか降りてきた相棒がその光景をデジカメに納める。

 先ほどの岩の窪みの中の岩のスラブを仲間が登りだす。苔がついているから、簡単では無さそうだ。でも、スタンスを磨き、ホールドを見つけて何とか登りだす。ところが、あと一歩でリップが持てると言うところで行き詰まる。ちょっと跳べば届く距離なのだが、リップの状態が分からないし、落ちるわけに行かないから、ホールドを探す。何とかホールドを見付け、足を上げてリップを掴む。

 もう一人の仲間も、最後のリップを取りに行く所のムーブが少し違ったが、そこを登る。

 小生、スラブチックなところが最近は結構得手になってきているので、真似をしてみる。

 何にも無いと思っていた壁に小さなポケットがある。小さなカチもある。足は磨いてもらったところが使えそうだ。左足で離陸し、右足を上げて、持てないと思っていたリップに先の仲間の真似をして右手を出してみたら意外と持てた。左足を上げてそのリップの左のガバを左手で取ったらもうおしまいである。やっぱりスラブはうまくなったのかも知れない。

 山頂から携帯電話で誰かに登頂報告をしていた単独のおじさんに皆の登頂記念写真のシャッターを押してもらって、下山に掛かる。

 途中、山頂の隣の岩峰に寄り道するというので、相棒を登山道に残し、小生だけ付いて行く。

 大きな岩を回り込んでゆくと、結構広い岩棚にでる。右の方には瑞牆山山頂の岩が直ぐそこに見える。

 目の前には高い岩峰が聳えている。その岩峰の一部を登るらしい。最初はちょっと寄り道だと思って、相棒を登山道に置いてきたのだが、登るというので、相棒を呼びに戻る。

 仲間は10m位のクラックを登ろうとしているらしく、降り口を確認し始める。ところが、大きな岩だし、傾斜も急だから、降りるのが難しそうだ。降り口を求めて岩を廻ってみたら、傾斜がそれほどきつくは無い、岩がボコボコした凹角が見つかり、降りられることを確認できた。

 その壁には顕著なクラックが3本くらいある。そのうちの易しそうなところを登り始める。

 抜け口が悪かったらしかったが、クラックを抜け、その上に続く岩を天辺まで登って行く。

 続いてもう一人の仲間も登って行く。

 そのクラックは小生には無理そうだったが、その手前のカンテは登れそうだったので、そのカンテに取り付いてみる。

 ホールドは全部ガバだったが、安定はしていないから、慎重に登る。最後のマントルで少し手こずったが、少し右に行ったり左に寄ったりしながら上の岩棚に立ち、そのまま仲間のいる天辺を目指す。

 そこからは傾斜がなくなるから難しくは無いが、高度が上がって行くので怖さが増してくる。慎重に手や足を確認し、ルートを確認しながら天辺まで行く。

 岩峰の天辺にはピンが打たれ、シュリンゲが掛けられていた。

 隣の山頂から何人かの登山者がこちらを見ているようだ。多分我々が登っていたところも見ていたのだろう。

 今までに、この岩の上に果たして何人くらいの人が立ったのだろうか。多分そう多くは無いだろう。

 一通り周りの景色を満喫し、金峰山山頂の五丈岩も確認して、慎重に降る。

 小生が登ったカンテの左側のフェースを仲間が登る。そんなに難しくは無さそうだが、フレークが剥がれそうで怖いらしい。そして、抜けのリップのホールドの係りが良くは無いらしい。もう一人の仲間も登り、やっぱり同じことを言う。登ってみたかったのだが、最後のマントルのホールドが良くないらしいので、諦めることにする。

 仲間が小生の登ったカンテの右側のカンテを登ろうとしている。途中、ちょっと被った状態になって、ハング上のカンテを下からパーミング気味に持ち、その手で左に出て上に抜けるというムーブを見つけるのに何回か掛かったようだが、結局は仲間二人ともそこを登る。

 それを見ながら、小生はとってもそんな所は登れないからと、その右側の小さな岩の少し寝た壁を登ってみる。

 出だしが少しだけ手が悪かったりするが、出てしまえば直ぐにリップが持てる。

 続いて、そのままその岩の右側の面にトラバースして行く。リップは良いから、難しくは無い。やっぱり最後はマントルで上に上がる。結局降りる方が難しい岩だった。

 岩峰の基部を右側のほうに回りこんでみる。下のほうの壁の傾斜は緩くなり、あまり面白そうなところは無い。尚も回り込んでゆくと、垂直に近い傾斜になり、リップまでの高さも低くなってくる。しかし、ホールド、スタンスが豊富に出現するので、わざわざ登るところではなくなる。引き返す。

 仲間はまた別のクラックを登り始めたので、先ほど諦めはしたが少し気になっていた仲間が先に登った所を触ってみることにする。

 登っていって、真中辺のフレークを叩いてみると、確かに浮いた音がする。でも足が良いし傾斜も僅かに寝ているからと、そのフレークを使って一歩足を上げ、左側のクラックを掴む。そのまま足を上げればリップに届きそうなのだが、そこを上がってしまうと引き返すのが難しくなりそうだ。高さも5m近くになるだろう。マットを敷いている訳ではないから無理をせず、そこからクライムダウンする。

 仲間も一通り登ったとのことで引き返すことにする。

 登ってくるときに、相棒が相当に足に来てしまっていたようなので、下山は不動沢方向に降ろうかと仲間と話していたのだが、相棒に聞くと、大分に休んだので、登ってきたところを降っても大丈夫だという。多分、登って来たところを降るほうが時間が短いだろうから、登って来た道を引き返すことにする。因みに、後で調べてわかったのだが、その道はパノラマルートという登山道だったらしい。別に展望が利くという道ではないのだが。

 降りは、登りに想像したよりは楽に降れ、仲間に何回か途中で待っててもらいはしたが、何とかそう大幅に遅れることも無く、何とか降ることが出来た。

 登りに見ていった登山道脇の岩は、やっぱり朝、カンマンボロンで会った仲間達が磨いた岩らしい。そして結構手ごわい岩らしい。

 その岩の前に到着したのがまだ4時半頃だったので、一応触ってみることにする。

 登山道脇には赤っぽい岩と白っぽい岩が少し離れて存在する。赤っぽい岩を通り越して、先に白っぽい岩を観察する。

 岩の丁度真中辺に僅かなバンドが水平に走っており、縦には僅かなクラックが走っている。真中を行くにしてもカンテを使うにしても、いずれも悪そうだ。

 少し戻って、赤っぽい岩の前に行く。

 この岩の登山道に面した面は僅かに被っている。右よりの少し上のほうに僅かなバンドがある。それを使ってリップを取れば登れるかも知れない。

 左のカンテから壁の真中辺までリップが緩やかに登っている。そのカンテからリップをトラバースして行けば小生にも登れるかも知れない。そんな岩である。

 仲間が壁の真中にトライを始める。ところが、思ったよりもスタートホールドが悪いらしく、なかなか次のバンドのカチホールドが取れないらしい。

 右のカンテのホールドからなら次のカチホールドが取れるらしいので、そこからスタートしマントルする。しかし、マントルも易しくは無いらしい。

 小生は、左端のリップ直下のカチホールドでスタートしリップをトラバースしてみる。2手位は進んだが、その先のリップが悪く落ちてしまう。

 仲間が、小生がスタートしたホールドより下のホールドからSD気味にスタートし、登って行く。しかし、岩の頂点の部分がまん丸の感じでホールドが無く、マントル出来ずに飛び降りる。やっぱりその辺はホールドしにくいらしい。

 もう一人の仲間が、その少し手前の斜めのリップをマントルする。やっぱりその辺が妥当なところらしい。

 小生も真似をしてみたが、足がリップまで上がらず出来なかった。

 仲間達は正面の所にトライを重ねているので、小生は左のカンテのSDスタートをやってみたが、どうしても足が地面についてしまってうまく出来なかった。

 左のカンテを触ってみたら、意外ともてるところがある。そのホールドで次のカチホールドを取りに行ってみる。

 右足はカンテの少し高いところ、左足は岩の基部のスタンスに置いて左手を出す。ホールドに手が掛かるのだが、左足が切れてしまい、はがされてしまってホールドの保持が出来ない。左足の位置を変えてみたりおき方を変えてみたりしながら何回かやってみたが、結局駄目だった。

 仕方がないから少しチョンボして、いきなり取れなかったカチホールドを持ってスタートしてみる。

 左足を左のほうの少し高いところに上げてガストン気味に少し遠い左のホールドを取りに行く。しかし、そこも出来なかった。

 白い岩を触りに行っていた仲間が戻ってくる。やはり、バンドやクラックに見えたところを触ってみたら単なる皺だったらしい。


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作成年月日 平成20年 9月21日
作 成 者 本庄 章