ニノ谷エリアー

2008年 9月21日記

 以下は、ニノの谷と呼ばれるエリアの案内である。

 今回教えてもらった大黒岩とは二の谷にある大きな岩である。その付近には千里眼という有名な課題がある。しかし、小生が手軽に遊べる岩は少なかったような気がする。

 先ず大黒岩の上のほうの岩を物色する。

 大黒岩の直ぐ上には難しいカンテの課題のある岩があるが、その岩には小生が遊べそうな所は無い。

 その岩の少し上の岩を見ると、正面の壁に適当なホールドが見え、小生にも何とかなるかもと期待を抱かせるラインが見える。

 荷物を置きストレッチの後、右のほうの壁のやさしそうな所を一応マットを敷いて登って見る。ガバがあって、3手か4手位だから、やさしい。右のカンテを回り込んだ右側の壁も登って見る。こっちもホールドがいっぱいあるからやさしい。

 いよいよ正面の壁を触って見る。結構持てそうなカチに見えたホールドが実は外傾していて持てそうに無い。離陸して少し遠いそのカチが持てればと考えたのだが、どうもだめそうだ。即諦める。

 以前来たときに少しは飛べた、千里眼の右隣のランジ課題を今回のメインにしようと千里眼の岩に移動する。

 ここは結構日が当たって、岩は完全に乾いていそうだ。

 移動するだけで汗をかいてしまう。先ずはマットを広げて、上半身裸になって、マットに寝転がって休息をする。課題に取り付く前に休息である。今回はそんなペースでスタートする。

 相棒と適当に話しをして、あんまり休んでいてもと、課題に取り付いて見る。

 右手は5本の指先がかかる薄いカチ、左手はやっと3本の指が入る浅いポケット、左足は結構大きなスタンス、右足はちょっとした斜めのヘッコミの所辺り、と言う感じで、両手左足で離陸を試みる。ところが、右手が悪く、左足が少し左過ぎるから離陸が出来ない。前はどうやったんだっけ。左足の大きなスタンスは少し左に寄りすぎているから、これは使わなかったんだろうか。思い出そうとするのだが、思い出せない。また休んで相棒とお話をする。そんなことを3〜4回繰り返す。

 その間、色々と足を探って見る。しかし、最初に注目した場所以外にはどうも良さそうな物は見つからない。そうこうするうちに離陸ができるようになる。

 やっぱり、少し悪目のカチだから、それに耐えられるようになるのに少し時間がかかったのだろうか。

 このことはジムでもしばしば経験することである。やっとそのカチが持てるようになったら、それを引き付ける大きな筋肉が疲労してしまっていて、引き付けられない。そんな経験をしばしばしている。腱と言うものは温まらなければ力を加えられないと言うことなのだろうか。なんか今回もそんな感じである。

 離陸ができるようになってきたから、次は右足を決めて飛んで見る。全く飛べない。というより、右足が決まらない。どの辺にどんな風に置けば良いのかが良く分からない。はっきりとソールのサイドがかかるというわけではないのだ。

 そのスタンスに引っ掛けるソールの位置や角度等、色々考えて見るが、思うように足が置けずに落ちる。でもリップは叩けるようになってきた。といっても、持てるだろうと思われる所ろまではまだ10cm近くはあるだろうか。

 そのスタンスは寝転んだ顔の前辺りにあるから、寝転がりながら色々と観察し、靴の置き方を想像する。そして、脱いだ靴を手で押し当てて見る。

 遊歩道を薄めのボルダーマットらしい物を背負った二人連れがこちらを眺めている。ボルダラーだろうか。そうこうするうちに遊歩道を先に進んでいった。

 3回か4回位リップを叩けたが、だんだん到達点が下がってくる。やっぱり疲れだしたようだ。今日の所は一先ずは諦めよう。

 その岩の左のカンテが4級だかなのだが、少し高くスラビーなので、まだ登れていない。スタートは一段下がった所からポケットを使ってスタートするのだが、そのポケットを触ったら中に水がたまっていた。今回再挑戦しようと思っていたのだが、これも諦める。

 今回はどうせ二人でのんびりと遊ぶつもりだったし、時間もあるからと、この二の谷だけでなく、そのほかのメインエリアの再確認をも兼ねて色々と歩いて見ることにする。

 荷物を置きに「千里眼」の岩に行くと何人かいた人達の一人だけが残っていた。どこかで見たことがある人なので、「どこかでお会いしましたっけ」と聞くと、「小川山でも、御岳でも、三峰でも会ってますよ」と言われてしまう。これはまずい。

 その人が、千里眼のリップの場所を聞くから、多分左のほうだと思うが、あの人は何時も飛んでいるからあの人なら分かるだろうと大黒岩のほうにいた仲間を指して答えると、その仲間の名前を言うから、やっぱり結構近い人だったようだ。後で仲間に聞くと、先ほどの女性が連れてきてもらっている人として名前を挙げた人の内の一人と判明した。あの人が×××さんだったのか。

 仲間と2人で「千里眼」右のランジ課題を跳ぶ。丁度落ちる所に石が出ているので、その石を隠すように担いでいったマットを敷く。

 右手のカチを親指を架けて持つと持てると言うと、先客が、親指を架けると跳べないから親指は架けないという。そんなものかなぁ。小生には親指を架けないと持てないからなぁ。悲しいけどそう思ってしまう。

 親指を架けずにもってみたら持てた。離陸が出来た。沈み込んで跳んでみたらリップに左手が掛かった。指が擦れて少し痛くなった。わっ、跳べた。指が掛かった。初めてだ。やっぱり強くなったんだ。

 沢を挟んで向かい側の正面に大黒岩の一番易しいスラブ面が見える。大きい岩だから凄く立派に見える。仲間があそこは登ったのかと聞くから、初めて来た時に仲間が皆登って上で登ってこいと招くから、登るしかなくて登ったと答える。

 仲間の一人が「天の川」、だったと思うのだが、に挑戦している。大黒岩の右のほうのダイク沿いに登るラインである。少し高い、核心の真下には大きな岩が露出しており、その岩によって大きな段差が出来ている、怖い課題である。

 大黒岩の仲間がティッシュ無いかと聞くから、どうしたのかと思ったら仲間の足から出血してしまったのだという。生憎ティッシュの持ち合わせは無かったので、テープなら有るけどと答えるとともに、傷口を強く2〜3分抑えていれば血は止まるよと答えておく。

 その後2人で何回か跳んで、仲間の所に合流する。

 仲間が、花崗岩が始めての仲間に、ここ面白いよと勧める。大黒岩の7〜8mはあろかという、先ほど仲間に呼ばれて仕方なく登ったと説明したスラブ壁である。

 その仲間は、普通なら下から見上げただけでやめてしまうだろうその壁を登りだす。途中、真中より少し下辺りで、ポケットホールドで嵌ってしまったらしく、足を滑らせて落ちてくる。

 別の仲間がそこを登ってみせる。それを見て彼の仲間は再び登りだす。そして、最後のリップへの乗り込みの核心をこなし岩の上に立つ。スッゲー。降りてきた仲間にたいし、花崗岩が始めての人がこんなハイボールを登るか。仲間の無責任なコメントである。それに対し登った仲間は、最初の外岩の富士川でいきなり高いの登らされたから。それにしても、彼の足使いは見事だった。やはり流水に磨かれた滑滑の安山岩の富士川ボルダーのお陰なのだろうか。小生も少し触っては見たが、再び登ろうという気は起こらなかった。

 仲間が、前回やろうとして出来なかった課題のある岩で登っているので、その岩に行き、登れなかったところを登れるか聞いてみた。

 最初にトライした仲間は登れなかったが、別の仲間が登ってくれたので、小生も靴を取ってきて取り付いてみる。

 顕著なガバを右手アンダーで持って左手をリップの上のそんなによくは無いホールドに伸ばす。足を決めて右手を右少し離れたガバに飛ばす。足をスタートで使った大ガバに上げ、少し寝た結構ぼこぼこしたところの適当な窪みを使ってリップまで上げる。少し足を刻んで、左上だったかの少し見えにくい少し遠いガバを取れば終わりである。何とか一撃する。だったと思うのだが。花崗岩が始めての仲間も登る。

 出血した仲間が「千里眼」を跳ぶというので、小生も再びその横のランジを跳ぶ。マットはずっとこのランジ課題の下に敷きっぱなしであった。

 仲間が後ろに跳んでいると指摘してくれる。もっと壁に沿って跳ばなければならないと教えてくれる。そう言えば、岩の基部から少し離れたところの岩の上に敷いたマットの上に落ちてくる。後ろに跳んでいる証拠だ。本来ならばマットの無い岩の基部の部分に落ちなければいけないのだ。

 右手を意識して引き付けて跳んでみる。マットと岩の間に落ちる。やった、先ずは成功。後は飛距離だ。

 仲間も、同じように後ろに跳んでしまうらしい。やはり着地点が時々後ろのほうの木の根っこ近くになることがある。お互いに着地点を確認しながら跳ぶ。

 仲間の連れが先ほど花崗岩が初めての仲間が登った課題に挑戦している。途中で行き詰まり何回か落ちている。

 跳ぶのも飽きたので、再び仲間の元に戻る。別の仲間が「天の川」に挑戦している。

 その岩の上に綺麗なカンテを持った岩がある。このカンテは登りたいけど難しそうだからと諦めていた所である。花崗岩が初めての仲間が触っている。それを見て別の仲間が登ってくれる。そうか、最初に右手はカンテの少し上のほうを持って、左手はフェースのカチを使い、フェース側を正対で離陸するのか。

 真似をすると離陸が出来る。無理だと思っていた離陸が出来た。そこからフェースの少し遠いカチを取れば登れるのか。遠いカチは取れなかったが。

 3級くらいらしい。もっと難しいと思っていたのだが、次回何とか落とすことにしよう。

 千里眼という課題のあるエリアまで行くと、その千里眼を若者達が跳んでいる。一緒の仲間はその横のほうの高い岩のスラブを登るというので、小生だけで千里眼の岩に行く。ここには以前からずっと跳んでいる2級の課題があるのだ。

 仲間が跳ぶ合間に、小生もその右横の2級の課題を跳ぶ。

 右手カチ、左手ポケット、左足は左下のはっきりしたスタンスで離陸し、右足を右下の僅かな結晶にスメア気味に置いて跳ぶ。左手を出すのだが、リップに大分届かない。右足が決まらないのだ。

 隣の若者が小生の課題を見て真似をする。

 その若者は、左足だけで飛んでリップを捕らえる。確かに僅かに跳んではいるようだが。別の若者も跳ぶ。その若者はリップまで届かない。

 その若者、何回目かに、右のカチを両手で持って、右手で少し低くなった右側のリップを捕らえる。そうか、右のほうが跳ぶ距離が短くても良いのだ。

 真似をしてみたが、両手ではそのカチは持てなかった。

 若者達は結局千里眼には成功せずに、阿修羅に行くといってその場から離れていった。

 小生は、仲間が登っている大きな岩の上にある、3級くらいのカンテの課題を触りに行く。

 右手はカンテ、左手はフェースの甘いカチで、右足で離陸し、左足をフェースの中の少し高めのスタンスに上げる。そこまでは出来るのだが、次の手が出ない。

 左手で右のカンテを持ってみたり、色々と試してみたのだが、カンテの右手がどうしても動かせない。

 左足を上げるのを止めてみたり、左手のカンテを持つ場所を変えてみたり、色々やってみたが全てうまく行かない。僅かに被り気味だから、疲れても来る。

 それまでは、ビブラムでリソールしたベルクロアナサジを履いていたのだが、それが悪いのだろうか。何時ものミウラーに履き替える。

 なんだか左足の乗り込み具合がさっきよりは乗れている感じもする。しかし、相変わらずカンテの右手が動かせない。

 先ほど先に一人で下りた仲間が上のほうの岩に見える。結局ここに来ていたのか。デジカメを取り出して、望遠を効かせて写真を撮ってみる。

 尚もしつこくトライをしていたら、その仲間が降りてきた。で、諦めて一緒に大きな岩のスラブの前の仲間の元に一緒に行く。

 靴を履いて、先に磨いた、大黒岩の「七夕」という恐い課題の前の小さな岩を登ってみる。

 腰辺りから下が抉れており、その上はスラブである。小生の一番苦手とする、所謂やさしめ、離陸核心と言われる課題である。

 右足を腰の辺りのリップに上げ、左手をオポジション気味に離陸すればほぼ終わりである。右手は適当な小さな穴だったと思う。

 足が少し高目だし、手はいずれもしっかりとしたホールドは無いから、なかなか右足に乗り込めない。ああだこうだ、少しバランスを探って、ようやく離陸に成功する。若者なら簡単に足が上がって簡単に離陸が出来るのだろうが、小生には股が開かないから、なかなか足が上がらず、簡単にはやっと開いている足に乗り込むことが出来ないのだ。

 あとは少し傾斜の緩めなスラブが2mちょっとだから、少しだけ頑張って上に抜ける。グレードはどれくらいだろう。誰もグレードは言わないし、小生にもわからない。多分易しいのだろう。

 瑞牆に自分達だけで来た時は必ずといってよいほど寄る、「千里眼」の右のランジの課題を触りに行く。

 右手は水平の余り良くは無いカチ、左手はちょっとした、指が二本程かかるようなかからないような浅いポケットで、左足は少し左に外れた水平のかっちりしたカチスタンスで離陸する。ここのところが先ず最初の小生にとっての核心なのである。

 右手のカチが意外と持てる。意外とスムースに離陸が出来る。決して状態が良いわけではないから、今までなら離陸するまでに少し時間が必要だったのだが、今回は一発で離陸が出来る。右足をあるんだか無いんだか判らないくらいのスタンスに乗せてみる。

 このスタンスが決まらない。何となくもう少し利いてくれた気がするのだが、今回は足を置けている気がしない。やっぱりこの課題も未だ遥かに遠い課題のようだ。でも、今までからすると、大分近付いてきた気はするが。まぁ、今後も気長にトライを重ねよう。ということで、そのトライはこれでお仕舞い。何しろ暫くは登れてはならない課題?なのだから。だって、登れてしまったら、また別の適当な課題を見つけ出さなければならないのだから。

 他の人たちが「クリカラ」という課題のある岩に行くと言うので、小生も付いて行く。多分始めての岩である。

 「千里眼」の尾根を少し登るとその岩はある。下から見ると右側に丸い砲弾のお尻のような突起が張り出しており、その張り出しの付け根の細いクラック沿いに登るのが「クリカラ」(倶利伽羅なのかも知れないが、字はわからない。)である。そのハングの下からSDで離陸し、ハングの左カンテ、そして、右のカンテを取ってハングを乗ッ越して行くという課題もあるらしい。因みに名前はまだ無いらしい。

 その「カラクリ」のある場所の反対側の方の被ったところには「カラクリ」という課題がある。「カラクリ」と「クリカラ」の間の苔々の所も案内してくれた仲間は登ったらしい。

 他の仲間が「クリカラ」やその下のまだ名前の無い課題をやっている間に、苔々の所を登って見る。

 確かに登れたが、磨かれていないから、そこそこ恐い。

 皆がトライしているハング部分の上に行ってみると、下からのクラックがずっと上にも続いている。そのクラックを追っていったら、ぐるっと回って、ハング部分の付け根を一周しているように見える。下に戻って、仲間と調べたら、本の数センチを除いてクラックが廻っている。ということは? どうせ小生の課題ではないからいいんだけど。

 次は、大黒岩との間の沢を渡って少し登った所にある少し高い凹角のある岩である。

 その凹角は1級位らしいのだが、何しろ高い。どう考えても、湯河原幕岩的にはリードの課題である。でも、綺麗だし、ここを登れと言わんばかりの凹角なのである。

 一瞬、登りたいと思ったが、仲間の登るのを見て、その気持ちは押し静めた。出だしが核心で上に行くに従って易しくなるとはいっても、やはりガバでは無さそうなのだ。でも、いつかは登ることにしよう。

 その凹角の右の被った場所でも二本ほどの課題が登れれているらしいが、そこは本当にフリーソロチックだったし、下地も決して良くなかったから、今回は誰も登るとは言わなかった。

 実は、デジカメはザックの中に置いてきてしまっている。悔やんでもしようがないが、やっぱりデジカメを持ってくるんだった。

 クリカラの岩の前に荷物を起き、その上に見える丁度マントルに良さそうな岩の偵察に出る。

 行ってみると、少し横長のテーブル状の岩で、正面には、適当な高さの結構被った面を持っている。その面の左の方には、SDでここを登れといわんばかりの、右に斜上するクラックと言うかフレークというかそんなホールドを持ったラインが見える。当然そこを仲間が登る。

 小生、被り物は苦手である。しかし、リップも持てそうだし、マントルもそう難しくはなさそうだし、何しろ岩がここを登れと言っているから、ここは登らねばなるまい。

 仲間の真似をして取り付いてみる。足が無い。何時もの如く離陸が出来ないのである。

 両手で右斜め上に伸びるしっかりと掛かるリップ状のホールドを持っているから、右足をどこかに置きたいのだが、良さそうなスタンスが見当たらない。左足のトウをそのクラック状のリップに引っ掛けようとしても、少し遠い目になるから、上手く行かない。ではもっと近くでヒールをとやってみても、小生にヒールが掛かるほどのクラックでもない。ああだこうだやってみたが、やっぱり出来ない。

 もう一人の仲間がそこを登ったので、見ていたら、左足はクラックの下の淵辺りをスメアで突っ張っている。そうか、そうするしかないのか。

 スメアで突っ張るというムーブは、手に負担がかかるので、指力に乏しい小生には、あまりやりたくは無いムーブだから、あえてその可能性を追求はしなかったのである。しかし、それしか無さそうだとなればそれをやるしかない。

 壁を調べてみたら、少し高い目ではあるが、クラックの下の淵にちょっとしたスタンスが見つかる。

 チョークでちょっと印を付け、そこを左足で突っ張ってみたら、リップのホールドも何とか持つことが出来、離陸が出来た。手を送って、少しかけやすくなったクラックにトウをねじ込んで尚も手を上げて行く。

 このクラックはリップの下辺りで途切れるので、そのすぐ上に同じような角度でリップまで走る短いクラックに乗り換えなければならない。しかし、そこまでくれば水平のガバに近いスタンスが使えるようになるし、上のクラックのリップも下のそれよりはガバなのでより楽になる。そのガバを両手で掴み、ガバスタンスの斜め右上のスタンスに右足を移し、リップの上のホールドを窺う。既に相当に力を使っている。

 このリップの上のホールドが少し遠いし、はっきりとしたホールドでもないから、どこだどこだと言って探っている間に完全に疲れてしまい、飛び降りざるを得なくなってしまった。

 被っているし、クラックのリップの下の方のホールドはスローパーチックだから、大変に疲れるのである。仲間の、そのクラックの左の壁を登る様子を眺めたり写真撮影したりしながら休息を取る。

 さっきの続きをまたやってみる。今度は意外とスムースにムーブが進む。リップの上のホールドを窺いに行くムーブもはっきりと自覚できる程前とは余裕が違う。身体を上げて、少し遠いあまりかかるとは言いにくいちょっとしたポケットを左手で取り、右足を左足に踏み変え、右足をリップの上に上げる。あとは傾斜が緩いから足なら立てる。

 ちょっとだけ満足する。

 仲間はその左側の壁も登ったので、前回も行った、少し高い目の凹角の課題のある岩に行ってみることにする。この凹角の課題も、この岩で一番最初に目に付くラインである。

 小生が先頭を歩いたからか、トレールを少し上に外してしまったようだ。

 前回も登った仲間が今回も登る。もう一人の今回初めての仲間も登りはじめる。

 今回初めての仲間は最近はクライミングはそう繁盛にはやってはいないらしい。今回も久しぶりの外岩だったようだ。そんなせいか、途中で何回か飛び降りてくる。やっぱり、傾斜が無いとはいえ、垂直に近いし、スタンスもよくな無いようだから、結構厳しいらしい。おまけに、今回はクライミングシューズを下ろしたばかりということもあったようで、その後も何回かトライを繰り返していた。

 出だしの所を小生も少し触ってみたが、なかなか離陸が出来ない。この離陸が最初の核心らしい。仲間のムーブを真似してみたが、ホールドが持てなかった。

 仲間二人は左側の壁も登っている。ここには2本ほどのラインがあるらしい。小生もそのうちの一本を登ってみようと思って下部を少し触ってみたのだが、共に思ったほどは易しくは無いようだった。

 戻るときに、この岩ではどこも登らなかったので、靴はマントルの岩に置いてきたものと思い、手ぶらで戻ったのだが、置いたと思われる、マントルの岩の近くを探してみたが、靴は見当たらない。やっぱり凹角の岩に持っていったのだろうか。戻るときに心当たりは探したのだが。仲間にそのことを告げ、一人で靴を探しに戻る。

 凹角の岩の置いたとすればここだろうと思われる場所を再度探してみる。しかし、見つからない。少し焦りながら、尚も記憶をもとに探してみたが見当たらない。さぁーどうしよう。そう言えばあそこにも入ったような気が。

 何回か行き来した踏み跡からほんの少し脇に入った場所に入ってみたら、周りの色と紛らわしい茶色の袋に入れた靴が置いてあった。確かに、来て一番最初にここに立って写真を撮っていた様な気もする。

 急いでクリカラの岩に戻り、仲間がクリカラを登る姿を一生懸命デジカメに納める。

 暫くデジカメを構えていたが、写真もそこそこに撮れてしまったし、寒くもなってきたから、クリカラの右側の、丁度目の高さくらいのルーフのマントルをやってみる。

 リップの上にちょっとしたお饅頭状のホールドが2つある。そのホールドで離陸してヒールをリップに持ってゆく、そんな感じである。

 右のリップが少し低くなっているし、ちょっとした切れ目もあって、何となくガチャガチャしているから、そこら辺にヒールを架けてみる。ルーフといってもそんなに出っ張っているわけではないからルーフの下の壁の適当なところに足が置けるので、ヒールはそんなに頑張らなくとも置くことが出来る。あとは、そのヒールで身体を引き上げ、体重を移して行けば良いのである。

 しかし、その踵に体重を移し、乗り込んで行けば何となくマントルが返る、そんな光景をイメージは出来るのだが、足の筋肉が悲鳴をあげ、踵で体を引き上げることが出来ないのである。要するに足の力が決定的に足りないのであろう。それを少し無理して頑張ると、足のスジが痛くなってしまうのである。なにしろ、ここのところ、殆ど自動車でしか移動しないから、足の筋力が極端に落ちているのである。歩かなければ、歩かなければと、常に考えてはいるのだが、それがなかなか実現できないのである。

 という訳で、一回で諦めてしまった。

 そうこうする間に3時を廻ってくる。そろそろ下の駐車場での待ち合わせ時間である。とはいっても、小生も仲間も、3時から4時頃に集まって、皆で目的地に移動しましょうと言うこと位いしか記憶に無い。まぁ、あの辺にいれば連れて行ってくれるだろう位な、漠としたことしか考えては来なかったという証拠でもあるわけだが。

 相変わらず大黒岩は大きかった。こんな高い所を本当に登ったのだろうか。今じゃもう登る気はない。その上の方の3級の課題のある岩に行ってみた。

 この岩は、以前から登りたいと考えている岩だ。できれば登りたい課題だ。

 右手でカンテをもち、左手でカチをもって、左足スメアチックなスタンスで離陸する。この離陸が少し力がいるのだ。続いて左足をポチッと出っ張った小さなスタンスに上げ、その左足に乗り込んで左上のかかりの悪い斜め横長のカチを取りに行く。そして右手をほぼ垂直に近いカンテに上げる。そんなムーブだったと思う。

 離陸はなんとか出来た。左上のカチをいくらか飛びつき気味に取りに行った。ホールドの縁をかすっただけだった。

 あのホールド、あんなに悪かったっけ。指はしっかり届いているのに、ズルッと滑っただけで留まる気配は全くなかった。

 足を探って見た。左上にちょっとしたポッチリがあった。

 今度はそのポッチリに乗ってみた。というか、足を乗せて左上のホールドを取りに行った。さっきよりは指がかかったが、保持するまでには至らなかった。

 次は、そのポッチリにしっかり乗って、静かに左上のホールドを取りに行った。今度は指がかかった。右手をカンテのほぼ垂直な部分に上げた。が、ここも悪かった。

 結局そこまでだった。その後は、ポッチリになかなか乗り込めず、左上のカチが取れなくなってしまったのだ。そこまでを何回か繰り返した後、靴のソールを確認して見た。角は丸かった。このせいかも。先っぼのソールもだいぶん薄くなっていた。またリソールしてもらわなければ。ということで、結局そこも諦めた。

 まず、大黒岩の上の方のカンテに3級の課題のある岩の前に行ってみた。この課題も未だ登れていないのだ。

 傾斜は僅かに被っている。その面の右のカンテと左上のカチで離陸し、左足を僅かなスタンスに上げて左上のカチを取りに行く。そんなムーブだったと思う。

 離陸し、左足を上げて、その足に乗り込んだのだが、その上のホールドは取れなかった。思っていたよりも悪いホールドだった。

 2回か3回位やったか。その位で諦めた。

 4歳の息子が岩を登りたいというので、その上の以前のイベントで子供達を登らせた事のある岩に連れて行った。この岩は、そんなに大きくはない、膝くらいの高さのリップがしゃくれている岩で、大人であればそのリップに立つと上のリップが取れてしまう岩だ。しかし、リーチのない子供にはそのリップが届かないので、真ん中に斜め上に走るフレークの縁を使わなければ登れない岩だ。

 まず、右の方からしゃくれたリップの上に乗り、左にトラバースしてフレークの縁に乗り込んで行く所までは行けたのだが、そこからフレークの縁に乗り込む所が少し足が高くなるので、できなかった。

 下でスポットというか、サポートしていたので、落ちることはないだろうし、たとえ落ちても丸抱えで受け止めても大丈夫な体重だから、思い切ってやらせて見たのだが、やはり4歳の息子には無理の様だった。

 ここに来た本来の目的は、千里眼の右のランジの課題をやることだったので、千里眼の岩に移動した。

 この課題は既に何回くらい挑戦したのだろうか。多分、このとあるエリアで小生が一番数多く挑戦した課題ではないかと思う。ここに一人で来た時は恐らく必ずといって良いほど寄っている。と思う。多分。

 ホールドを確認し、スタンスを確認する。ホールドってこんなに良かったっけ。先ずそう思った。続いてスタンス、えっ、どこだっけ。この少し左のこの良さそうなスタンスだったっけ。

 一先ずそのスタンスで離陸を試みた。離陸できない。ホールド、やっぱり悪かったんだ。やっと昔のホールドの感覚が蘇ってきた。

 この課題、離陸だけで結構疲れる。少し休む。

 昔のホールドの感触を思い出しながら、指のかけ方を探る。やっと昔の感覚を思い出し、足もなんとなく思い出して、離陸を試みる。その結果、何とか離陸はできた。しかし、とっても跳ぶところまでは行かなかった。

 この季節だし、離陸ができれば、まぁ衰えてはいないかも。そう考えることにし、その試技も終了とした。

 時間は多分3時を回ったころだと思う。そろそろ帰ることにした。


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作成年月日 平成20年 9月21日
作 成 者 本庄 章