四国その2の3 仁淀川中流から宇佐竜へ

2008年 1月26日記

 四国に入って3日目、1月1日つまり元旦ある。

 高知県いの町の土佐和紙工芸村道の駅で4時少し前に目覚めた。雨は上がっていた。

 周りはまだ暗かった。別にすることも無かったので、ポケコンを取り出し、それまでの行動のメモを書き付けていた。

 結局8時頃に起きだし、朝食を摂った後、9時過ぎに出発した。

 先ずは発電所を目指した。カーナビは相変わらず機嫌が悪かった。少し走ると、周りに雪が現れだした。道路には雪は全く無かったのだが、人家の屋根は白かった。周りの山は真っ白だった。昨夜の小雨はこちらでは雪だったのだろうか。

 発電所はすぐに分かった。少しゆっくり走りながら、駐車場所を探して見たら、その少し先の路肩に結構広めの駐車スペースがあった。

 道路は川沿いの少し高い所を走っているので、駐車スペースの脇から川原を見下ろすと、そこから少し下流に架かる橋よりも更に下流部分に結構大きなボルダーが幾つも転がっているのが見えた。道路沿いに少し下流まで行って、なおも偵察すると、対岸の方がより多くのボルダーがあることが分かった。流れの幅は結構広かったので、多分渡渉は無理のように見えた。対岸の川原への降り口を探すと、橋の袂辺りから階段があるのが見えた。川原いっぱいに日が当たり、雪の心配は全く無さそうだった。

 鋼鉄製のしっかりした吊橋を渡り、橋の袂から一旦コンクリートの護岸の上に降り、そこから橋下を潜って護岸に付けられた急な階段を降りて行った。

 川原は広めの砂浜になっていた。ボルダーがあるところまでは、そこかわ少し竹やぶをこがなければならない。流れに半分倒された、茨混じりの篠竹は結構手ごわかった。その先は大き目の岩が折り重なっており、所々流れが入り込んでいるので、そちらも結構苦労しながら進んで行った。

 最初に目に付いた大きなボルダーの下にやっとたどり着くことが出来た。その辺は下地が砂になっていたので、大分歩きやすくなっていた。

 大きな岩の高さは多分7〜8mはある。若しかすると10m以上あるのかもしれない。その辺りの岩質は関東の三峰のような感じだ。種類の違う岩が混ざっている感じだ。

 日が当たっているし、前日までの海岸のような風は無いから、それほど寒くは無かった。

 手始めに、2mちょっとの岩を触ってみた。やっぱりフリクションはそれほど良い岩ではなかった。ここも、トポは無い。適当に勝手に登るだけだ。

 ちょっと被った面の、天辺が真ん丸くポコンと出っ張った感じに岩があった。その被った面を丸い頭をめがけて登って見た。高さは多分3mくらい。ホールドスタンスはあったから、難しくは無かった。まぁ、最初から難しい所は登らないのだが。

 次もやっぱり、4mくらいの岩の下半分が被った所だ。その上は少し凹んでいてちょっとしたテラス状になっている所だ。

 ガバホールドからリップを捕らえるのだが、顕著なリップにはなっていないから、しっかりしたホールドが見つからなかった。テラスといっても、結構傾斜はあるから、結局そこの乗っ越しは実現しなかった。仕方がないから、その右の被っていない面からテラスの上に乗った。

 またまた下半分がより被った面になっている岩を登って見た。そちらのリップは斜上している。その被り度は135度はあった。

 ちょっとリップをトラバースしてマントルを試みた。そちらもままならなかった。

 少し下流側に行って見ると、結構高い、多分6〜7mの、90度弱の壁を発見した。お誂え向きに壁の真中を斜めに大きなバンドと言うかフレークのリップと言うかが上っている。それを使えば登れそうだった。

 高さがあるから、幾らか不安はあった。しかし、やっぱり10級か。高いから9級にするか。まぁ、そんな所だった。でも、ここでも、10級ハンターの欲求を満足させてくれる課題が発見できたことは、少し嬉しかった。

 その下流も偵察に行って見たが、食指の動く岩は見つからなかった。

 3m位の四角い、面白そうに見える岩があった。ホールドになりそうな所は殆ど縦方向の岩だ。1手か2手で水平に走るクラックを取れば登れそうな岩だった。

 ホールドを探ったが、角が立ったところは無く、殆ど小生に持てるホールドは見つからなかった。何とか左カンテの僅かな引っかかりを見つけ、離陸を試みて見た。右手も僅かな痘痕だ。足は? これも悪かった。なんとかカンテにスタンスを求め、それらのホールドに力を入れてみた。力は入らなかった。

 見た目は結構気に入った岩だったので、なんだか悔しかった。ああでもないこうでもないと、ホールドを探し倒し、結局は最初のホールドで何回か空しい試技を繰り返した。そんな末に、やっと右足が僅かに浮いた。やったー。離陸できたー。2秒ほど体が浮いたぁー。

 それに気をよくし、その脇の、150度位も被った所を触ってみた。クラック沿いに割れた感じの面だったから、リップというかカンテというかにクラックの残骸のホールドが幾らかあった。それらを繋いで少し登って行った。って、本の2手か3手だが。

 そこで登れそうな岩は大体そんなものだった。丁度戻る方向だったので、護岸壁近くに見えた黒い岩に近づこうとしたのだが、意外と複雑に流れが入り込んでおり、茨も多かったので近づくことを断念した。

 帰りは、その岩の辺りから岸辺の杉林に入って戻れるかもと思ったのだが、結局は来た道をそのまま戻っていった。

 橋を渡り返し、少し下流に下ると、護岸壁を降りる消防用のスロープがあった。消防車が下りるにはちと傾斜が急に思えたが、結構幅広の立派なスロープだった。

 スロープを下りきった所に結構高い岩があった。下が大きく切れた面を持ったすごく大きな岩だ。登れればなぁと思いながら、その岩の裏に回ると、その岩の川側が易しい壁になっていたので、そこから岩の上に登って見た。本当に大きな岩だった。

 高さが4m位の岩に行って見た。下半分が薄被りの岩だった。真中辺を登って見た。

 対岸から、ちょっと魅力的に見えた岩に近づいて見た。中州になっていたので、近づけなかった。その手前の岩は、傾斜が無く、登ろうとは思わなかった。

 高さが2mくらいの80度位の壁を登って見た。その壁は2箇所も登ってしまった。

 高さが1.5m位のテーブル状の岩が目に入った。勿論下は切れていた。将にマントルしろと言わんばかりの岩だった。素直にマントルをしてみた。

 リップは立っており、丁度良い足があったので、小生にもマントルが出来た。というか、半分マントルと言う感じだった。って?

 消防用のスロープを登りながら、そのエリアの写真を何枚か撮った。後にその画像を確認したら、なんだか画像が荒かった。それまでも、木立の中のボルダーの写真が荒かったのは、露出不足かと思っていたのだが、そこは日の光が燦燦と降っていた。感光感度を1600にしていたからなのだろうか。

 そこから少し上流に633美道の駅があったので、そこによって見た。ここも前回に寄った道の駅だ。

 この633だが、この道の駅の前の国道は194号線と439号線が重複する区間なのだ。194と439を足すと。ということで、633なのだそうだ。そして、633美でむささびなのだそうだ。で、なぜむささびなのか。この道の駅の存在する町だか合併前の町だったかの形がムササビが飛んでいる形にそっくりなのだそうだ。誰がそんなことを考えたのだろうか。東北道の吾妻パーキングのスピード体感コーナーに匹敵するかもとの気がした。質は大分に違う気はするが。

 道の駅は雪だった。テントからは雪解けの水が滴っていた。おまけに休みだった。折角スタンプを求めていったのに。

 道の駅には大体スタンプが置かれている。それを集めるというスタンプラリーが結構あっちこっちで行われている。しかし。このスタンプは大体が道の駅の営業中にしか押すことが出来ない。無人になる時間は仕舞われてしまうのだ。盗難防止のためということらしい。従って、我々の行動パターンには合わないことが多い。なんとも世知辛い世の中だ。

 丁度12時半ころだったか。仕方がないから次の目的地を目指して引き返すことになった。

 次は宇佐竜というところだ。昨日の春野漁港に近い所だ。偶々機嫌が直ったカーナビによって、仁淀川沿いに海岸を目指した。

 行きは仁淀川の左岸を行ったのだが、帰りは右岸沿いに下っていった。途中、土佐市街中でスーパーの看板を見つけたので、寄ってみた。やっぱり、隣の薬局は営業していたのに、スーパー本体は休みだった。元旦はやっぱり休みが常識なのだろう。

 その先のコンビニはやっていたので、そのコンビニでカップ麺と肉まんを買った。コンビニってやっぱり非常識なのだろうか。

 宇佐竜とは、宇佐大橋を渡った旧宇佐町の龍の浜海岸に一つだけ存在するというボルダーのことだ。どうせ、その次の目的は足摺岬だから、そんなに遠回りにもならないし、急いで行っても仕方がないので、寄ることにしたのだった。

 県道から少し変な感じにグニャグニャと曲がって宇佐大橋を渡ると、間もなく龍の浜が現れた。そこは海水浴場になっていて、背の低い防波堤に浜への大きな3段か4段の階段が造られていた。自動車からでは直接浜辺が見えなかったので、その階段の先のちょっとした駐車スペースに自動車を停め、海岸に出ると、戻る方向の波打際にボルダーが一つポツンと見えた。

 荷物を持って岩に近づくと、その岩の下地半分の砂は濡れていた。潮の加減で、若しかすると水没する岩らしい。登る面は波打際の反対の面だから、登るのに支障は無かったので、その陸に面した面を登って見た。風が強かったので、足拭きマットが飛ばされるので、近くから石を拾ってきてマットの端に置いた。

 傾斜は僅かに寝ており、高さは3mという所だった。細かいクラックが縦方向に何本も走っていたので、難しくは無かった。

 次はその左の面を登って見た。写真に有った面だ。カンテは使いたくは無かったのだが、結局は使ってしまった。その岩は大体そんな所だった。

 その岩の陸側の防波堤にくっ付いて、より大きな岩が有った。行って見ると、海水浴場側の面がほぼ垂直で登れそうに見えたので、触ってみた。

 2手ほど登った所で、ホールドが欠けた。その上はもっと脆そうに見えた。やっぱりここを紹介してくれていた方も、この岩のことは書いてはいなかったので、多分登ってはいない岩だったのだろう。高さは高いところで5m位はある岩だったので、そこから飛び降りた。

 自動車に戻り、本のちょっと先に進むと、トイレもある広い駐車場があった。入ってみると、何台かの自動車が停まっており、人影も結構見えた。

 既に2時になっていたので、カップラーメンを作って昼食にした。

 コーヒーも入れ、ゆっくりしていたら、眠くなってしまったので、少しの間二人で昼寝をしてしまった。

 かれこれ1時間もゆっくりしてしまったので、3時過ぎに出発した。

 元の道には戻らず、その先の海岸沿いに走る道を進んでいった。

 地図には景色の良い道と有ったので少し期待したが、確かに崖の上の道だったから、海の眺めは良かった。

 須崎市で国道55号に合流すると、程なくすさき道の駅が出てきた。自動車も沢山停まっていたので、寄ってみると営業をやっていた。ここはかわうその里というらしい。鯛飯と鰹飯のお弁当を買った。

 やっぱり大きな国道沿いの道の駅は営業しているようだった。しかし、4時には営業を終わると言うことで、途中から蛍の光が流れ出したので、慌ててスタンプを押しに行った。

 そろそろガソリンを入れなければと考えてはいたのだが、丁度中途半端な減り方だったので、最初に出てきたセルフのガソリンスタンドは見送ることにした。

 あぐり窪川道の駅が出てきたので、また寄ってみた。

 鎌を売っていた。近くの鍛治屋さんの鎌らしい。丁度草刈鎌が欲しかったので、見てみたら、藪鎌と言う鎌が置いてあった。その鎌は他の鎌よりも柄が長かったので、それを欲しいと思ったのだが、刃の付け方の角度が開いていた。普通は90度位なのだが、100度かそれ以上に開いていた。そんな鎌は今まで使った事が無かったので、少し気にはなったが、柄の少し短い普通の草刈鎌を買ってしまった。

 相棒がアイスを食べるかと聞いてくれたので、勿論と言うことで、二人でアイス最中を食べた。

 もう5時も回っていたので、既に暗くなってきていた。周りには雪が見え始めてきた。その雪はだんだんその量を増してきた。遂には周りの景色は真っ白になってきた。しかし、道路に雪は無かった。

 セルフのガソリンスタンドが現れた。その先は中村、今の四万十市だ。多分そこにスタンドがあるだろうと、パスをしてしまった。

 そろそろ中村だと言うのに、ガソリンスタンド自体が殆ど出てこなかった。おおがた道の駅がその先だとの看板が出てきた。しかし、気が付くと、道の駅のまん前を走っていた。つまり、通り過ぎてしまったのだ。当然営業はやっていなかったと思うが。

 中村の市街に入ってもガソリンスタンドは出てこなかった。そろそろ土佐清水への分岐が出てくるはずだ。しかし、ガソリンスタンドは出ては来なかった。

 街中を外れた辺りで、反対車線にガソリンスタンドがあったと相棒が行った。その先は321号に入り土佐清水までは大きな町は多分無いはずだった。その先でUターンし、ガソリンスタンドに行くことにした。

 なかなかUターンできる所が出てこないうちに四万十川を渡り、321号の分岐が出てきてしまった。そこで、一旦321号に入り、すぐにUターンして、ガソリンスタンドまで戻った。

 そのスタンドは、セルフではあったが値段は少し高めだった。カードを使ったのだが、少し手間取ってしまい、やっとのことでガソリンを入れることが出来た。しかし、お姉さんが出てきてしまった。操作盤をガタガタいじった時にサービスコールと言うか係りを呼ぶボタンを押してしまったのだろう。

 321への交差点に近づくと、相棒がその先にハンバーガー屋の看板が見えるといった。小生には見えなかったのだが、コーヒーも飲みたかったし、久しぶりにハンバーガーでもということで、急遽ハンバーガー屋に行くことにした。

 ハンバーガー屋でポケコンを動かして見たら、インターネットに繋がった。別にメールが来ているわけではなかったが。

 8時頃めじかの里土佐清水道の駅に到着し、寝る支度を始めた。

 ズボンのポケットに入れていた時計が見つからなかった。色々な上着を着ていたので、そのどれかのポケットに入っているのかと調べて見たが、見つからなかった。どこかに落ちていないかと、自動車の中も探して見たが、やっぱり見つからなかった。しかたがないから、それまでの行動を思い返してみた。最後に時計を見た記憶は窪川道の駅だった。多分その時に。

 なんだか色々と考えていたら、なかなか寝付かれなかった。たかが千円か二千円の時計のために。でも、2回ほど電池を変えた時計だった。ということは、充分に元は取っている時計だ。とはいっても、なんだか愛着のある時計だったから、なんだか寝付かれなかった。


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作成年月日 平成20年 1月26日
作 成 者 本庄 章