怪我に際して

2006年 2月 4日記

 遂にやってしまった。パキッてしまったのである。

 ここのところ暫く、この「いろいろ欄」の更新も滞っているので、その辺の経緯、顛末、また心境等を少し書いてみることにする。

 小生、若い頃に沢で起こした事故以来、クライミングで、擦り傷、切り傷以外の、大きな怪我をしたことは今までに無かった。勿論パキッたのは初めてである。

 先ず、力が無い。従って、ダイナミックなムーブはやらない。急激な筋肉の発達も無い。等など、若者がパキる主な原因の大半が小生には欠けていることがその大きな理由であろう。老いがパキリを予防してきた。そういうことだったのであろう。

 なのに、今回膝をパキッてしまった。顛末はこうである。

 ある夜のジムの人工壁である。11cだかのルート課題の出だしのムーブで、スタートから次の悪目のホールドを右手で取り、続いて遠い目の縦に長いピンチのスローパーホールドを左手で取りに行くというところがあった。そこをそのスローパーが取れないということで、何人かで色々と試していた時である。

 小生を含め、その仲間達では結局解決が付かず、上手な人にやってもらったところ、スタートの、壁とホールドの間に指をかけて持つタイプのホールドに左足のヒールを掛け、遠い目のスローパーホールドをスタティックにとるというムーブが良さそうだと教えてくれた。

 多分できるだろうムーブを教えてもらっても、右手のホールドが悪い目だし、スタートホールドが高い目でヒールの体勢に持って行き難いから、なかなか出来ない。

 そんななか、何回目かに、膝を曲げた左足全体を股の付け根からほぼ水平にして、ヒールの外側をそのスタートホールドの壁との間の角に掛け、その足を垂直方向に起こしていったのである。その時である。ヒールが掛かりすぎて脛がスムーズには垂直に立ってくれず、何となく膝を捻る感じで力を入れた時である。その左膝から、「ブチッ」というような、何となく鈍い目の結構大きな音がしたのである。痛みは無かった。しかし、いやな予感がしたので、そのまま降り、その膝に体重を掛けてみた。痛くは無いのだが、何となく力が入らない。膝を少し曲げ、尚も体重を掛けようとすると、膝に全く力が入らず、そのまま膝が曲がっていってしまう。やっぱりやってしまったかも。

 幸い膝を真っ直ぐにしていれば体重を支えることは出来るし、特に問題は無かったので、そのまま近くの椅子に腰を掛け、暫く静かにしていた。

 その後、何となく違和感は有ったものの、それ程の痛みも襲ってこない。急激に腫れてくるという予兆も現れない。普通、大きな捻挫や骨折があると、その患部が急激に腫れてくるものなのである。

 再び立ち上がって体重を掛けてみたら、先程よりは体重は掛かる。パキッた訳でもないのだろうか。そろそろと少し歩いてみたら、痛みも無く歩くことができる。大したことは無かったのだろうか。

 暫く様子を見た後、その日に何回か取り付いて、まだ登れていなかったドッ被り課題を登ってみた。無論ボルダー課題である。一箇所、左足のキョン気味のムーブが出てくるところが有ったが、大きな痛みを感ずることも無く登り切ることが出来た。やっぱり、大丈夫なのだろうか。しかし、飛び降りるのは恐かったので、途中までクライムダウンし、右足一本で着地した。なんだか期待と不安の入り混じった、なんとも複雑な感じであった。

 膝の裏側とか、その少し上の横とか、少し摩ってみたが、別に強い痛みも感じ無い。しかし、何となく全体に僅かな痛みのような感じは残っている。ドッ被りの課題も登れたことだしと、ジム終了の時間まではまだ1時間以上も有ったのだが、大事を取ってその日はそれで終了することにした。

 家で、堀炬燵に入ると、痛めた膝が少し痛い。足の角度を調節すると、痛みを感じないところがある。暫くその角度を保つが、疲れてくるからその足を動かす。すると、刺すような痛みは無いものの、鈍い痛みがするのである。

 やっぱりどこかを確実に痛めた様だ。何となく暗い気持ちになってくる。

 畳に横になると、足の置き方により痛みを感じる。布団に横になって見ると、傷みは感じなくなる。そのまま一晩横になる。

 目を覚ますと、膝の痛みが昨夜よりも大きくなっている。膝を見ると、明らかに腫れている感じではないが、何となく腫れている気がする。体重を掛けてみると、全体が痛み、やはり歩きにくい。階段を下りるときも、膝を曲げた状態で体重を掛けると痛みを感じるから、痛めた足を先に階段の下の段に降ろし、突っ張ったまま体重を掛け、反対の足を下ろす。

 やっぱりクライミングは暫く駄目の様だ。そこで完全に淡い期待は捨てざるをえないことを自覚した。

 その痛みは、2日目が最高であったが、3日目の今日は穏やかではあるが引いてきている。この調子で行けば、痛みが引くまでにそう日にちは掛からないだろう。しかし、痛めた膝をよく見ると、外側がなんだか丸くボコンと出っ張っている。正常な膝にはそんな出っ張りは無い。気になるから、その部分を押してみた。痛くはない。なんだかブヨブヨしていて硬くも無い。何だろう。少し気になる。

 膝に何らかの異常が生じたことは間違いが無い。未だ僅かではあるが痛みがあるから、今までの様にクライミングができるようになるまでにどれくらいの日にちを要するかは全く判らない。まぁ、これを良い機会として、暫く休養することにするか。

 まぁ、以上がその顛末であり、今の心境である。

 小生は、先にも書いたように、今までにクライミングで大きな怪我をしたことは無かった。3年ほど前の暮れに、足首を痛め、暫く外の岩に行かなかったことは有ったが、クライミングを長い間休んだことは無かった。まぁ、それが一つの密かな自慢でもあったわけではある。

 これから、膝の異常の転帰がどうなるかはわからないが、暫くクライミングを離れ、少し休養するのも良いかもしれないと思い始めている。成書にも、高名なクライマーがあるきっかけで1年とか2年とかクライミングを離れ、その後復帰してからは以前にもましてその成果を上げたということが書かれていた。この歳でクライミングを一時中断することがどのような結果を招くかはわからないので、大いに不安ではあるが、やはり、一時クライミングを離れてみようと思う。

 ということで、この紀行文も暫くは更新がなくなるかも知れない。今後の予定として、青森県でのボルダリングを予定していたが、それが何時実現するかもわからなくなってしまった。自分にとっても少し寂しい気もするが、今後のことを考えてということである。

 と、言いながら、この後、すぐに紀行文がアップされたりして。まぁ、実際はそれをどこかで望んでいるだろうことも確かではあるのだが。


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作成年月日 平成18年 2月 4日
作 成 者 本庄 章