ビルダリング?

2000年6月28日記
 先日仕事の関係で宿直を仰せ付かった。その時、夜はどうせ大してやる事が無いからと、廊下の壁を登って見たので報告する。

 その壁はビルの玄関の廊下にあり、10cm×5cm位の大きさの陶器のタイルが7〜8mm位の目地で壁一面に張ってある。そしてそのタイルは7〜8mm位壁面から飛び出している。というか目地がそれくらい凹んでいる。つまり、指の先が僅かに掛かる状態で貼られているのである。これは登って見るしか無いのである。

 でも、これには一つ関門が存在する。それはその壁は玄関の正面にあるものだから常に誰かの目線が存在するのだ。そしてそれは、なお悪い事に全て身内の目線だと言う事である。

 しかし現在の小生はそんなことを気にする小生ではない。もうこの歳になると職場で何を言われようと痛くも痒くもない。

 よし、決まった。あの壁を登ろう。ということで、この壁への挑戦が始まったのである。

 この壁をもう少し詳しく紹介すると、向かって左側はカンテになっており、そのカンテを回りこんだ所もタイルを2枚か3枚分の幅で貼りつけた壁になっている。そしてその壁の正面中央には少し大きな絵が掛かっている。幅は2間、つまり4m弱位である。だから実際に登れる所は左右の1.5m位の幅しかない。

 この壁は玄関の正面にあるのだから汚したりタイルを剥がしたりしてしまってはまずい訳で、まさかフラットソールを履く訳にはいかない。万が一体重が一つのタイルに掛かってしまうと剥がれてしまうかも知れないし、例え剥がれなくとも黒く汚してしまうのはまずいのだ。それに、幾ら小生最近は仕事は適当にとは言っても、仕事場にまでフラットソールは持ち込んではいない。

 そんな訳で、この壁は硬いプラスティック底のサンダルで登ることとなった。

 このサンダルは底が硬い為にエッジングはそこそこ効くがスメアリングは全く効かない。従って、垂壁だとはいってもこのサンダルで登ろうとすると指への負担は相当なものとなる。それが狙いと言う所もある訳だが。

 先ずはさり気なく壁に触りながらホールドを物色する。本人はさり気ないつもりだったのだが、傍目には壁を一生懸命触っている変なおじさんと映っていたかも知れない。まっそんなことはあまり気にしない事にしようか。

 ここは何とか使えるかな。反対の手はどこにしようか。足はこの辺がいいかな。相手はタイルの目地だからそれこそそこらじゅうがホールドでありスタンスなのだが、これが結構微妙にそれぞれが違うのである。そして、それは丁度小生の能力限界の所なのである。だから慎重に選ばないとならないのである。よし決まった。壁に取り付いて見る。身体が上がらない。次にしよう。で、ひとまず偵察を終え、宿直室に引き上げる。

 テレビを見ていても面白くないからまた壁の前に行く。今回はあまり人目はない。さっきのホールドとスタンスを確認する。あれぇ、これだったかなぁ。こんな悪かったかなぁ。まぁいいや。今回は少し気合を入れて取り付いて見る。おっ、身体が上がる。よし次の足はっと、で壁から身体が放れる。もう一回。もう一回。同じ事を繰り返す。壁に止まる事は出来るのだが動く事が出来ない。少し休もう。

 右の壁でやっていたのを今度は左のカンテを使ってやって見る。左手をカンテの左側の壁のホールドにしてやってみる。右の壁の時よりは少し楽に身体が上がる。スタンスをカンテに求めればもう少し楽になるかもしれないとカンテのスタンスを探す。でも本当の直角だから結局はカンテよりは垂壁の方が使い易いみたいだ。

 手が少し良くなった分足を少し上げて見る。乗れる。さっきよりは高い位置で壁にとまれた。カンテの影から人があらわれた。お互いにびっくりする。気まずいけど気にしない。とは言っても一応部屋に引き上げる。

 あれで次に足が上がればなぁ。仕方が無い。時間も時間だから次の課題にしよう。

 それから約1ヶ月の後に再び宿直が回って来た。よし、今日は何とか次に足を上げよう。

 今回は2回目、前回よりも大胆に行動する。もう、人目をはばかる事はしない。

 丹念にホールドを探る。なんか悪い。触るたびにホールドが悪くなって行くようだ。実際はそんなことは無い筈なんだが。

 意を決して壁に止って見る。指が保たない。そう言えば体重が少し増えてしまったものなぁ。最近はジムでも冴えないし。諦めて部屋に戻る。少し休んでからまた取り付く。なんとか壁にとまれるようになってきた。やっぱりアップ無しのいきなりでは指パワーを100%発揮することは出来ないようだ。

 思い出して、左のカンテに取り付く。やっぱり少し楽だ。が、やっぱり次の足が出ない。前回と同じだ。でも、こっちを攻めれば次の足が出るかもしれない。

 なんだかんだ結構時間が経った。今日も時間切れか。仕方が無い、次回の宿直までお預けである。まさか、いくらなんでも昼間から玄関で壁に取り付く訳には行かないからなぁ。

 スタティックに天井が触れたらまた報告する事にしよう。


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作成年月日 平成12年 6月28日
作 成 者 本庄 章